OTAI AUDIO 沓名です。
今回取り上げるのは、OTAI AUDIO店頭で常設展示しています
の3機種です。いずれもハイエンドにふさわしい存在感があるスピーカーですが、選ばれる理由は同じではありません。
今回は、ハイエンドフロアスピーカーを比較検討していて、音の好みだけでなく、設計思想や導入条件も含めて判断したい方に向けて、優劣ではなく設計思想やサウンド・導入時に見ておきたい違いを整理してみようと思います。
内容はメーカー公表情報と店頭での試聴印象をもとにまとめています。
3機種の違い一覧
| 項目 | MARTEN Parker Quintet | B&W 801 D4 | FinkTeam BORG Episode2 |
|---|---|---|---|
| 方式 | 2.5ウェイ・パッシブラジエーター型 | 3ウェイ・バスレフ型 | 2ウェイ・バスレフ型 |
| 周波数レンジ(メーカー公表値) | 24Hz~40kHz(±2dB) | 15Hz~28kHz(±3dB) | 41Hz~30kHz(-6dB) |
| 感度 | 93dB(2.83V/1m) | 90dB(2.83V/1m) | 87dB(2.83V/1m) |
| インピーダンス | 4Ω(最小2.7Ω) | 8Ω(最小3.0Ω) | 平均10Ω(最小6.5Ω) |
| ユニット構成 | 25mm 純セラミック・ツイーター、190mm セラミック bass/midrange×4、229mm アルミニウム・パッシブラジエーター×4 | 25mm ダイヤモンド・ドーム・ツイーター、150mm Continuum FST ミッドレンジ、250mm Aerofoilバスユニット×2 | 260mm mid/bass、AMT ツイーター |
| 外形寸法(幅×高さ×奥行) | 330 × 1170 × 540mm | 451 × 1221 × 600mm | 300 × 1050 × 400mm |
| 重量 | 60kg | 100.6kg | 52kg |
| 一言でいうと | しなやかで伸びのあるスケール感 | 重心の低い堂々とした鳴り | 自然なまとまりと抜けのよさ |
Point
- MARTEN Parker Quintet 高感度・多ユニット・パッシブラジエーターによる、しなやかで大きな鳴り
- B&W 801 D4 3ウェイ大型機ならではの、低域の深さと重厚なスケール感
- FinkTeam BORG Episode2 シンプルな2ウェイ構成とAMTによる、自然なつながりと抜けのよさ
どんな思想で作られているか
3機種はいずれも、ハイエンドスピーカーとして高い再現性を目指して作られています。ただし、その実現の考え方には違いがあります。
MARTEN Parker Quintet:造形美と反応のよさを両立
Parker Quintet は、高い再現性を目指しながら、見た目の美しさや所有感も大切にして作られたモデルです。キャビネットは工芸品のような完成度があり、ハイエンドスピーカーらしい存在感があります。
そのうえで、このモデルは高感度設計を土台に、量感やスケール感だけでなく、音の立ち上がりや反応のよさまで両立しようとしています。3機の中では、見た目の魅力と音の快活さが結びついている点が、Parker Quintet らしい特徴です。
動画は Parker Quintet そのもののインタビューではありませんが、参考までに掲載しています。
B&W 801 D4:基準機としての安定感と総合力
801 D4 は、高い再現性を目指すだけでなく、「基準になる一台」としての信頼感を重視して作られたモデルです。B&W というブランドが長く築いてきた評価や象徴性もあり、3機種の中でもっともリファレンスという言葉が似合います。
このモデルで重視されているのは、派手さよりも、帯域全体の整合性や全体像の安定感です。「これを選べばひとつの基準になる」と感じさせる総合力に、801 D4 の思想があります。3機の中では、王道のフラッグシップとしての説得力がもっとも分かりやすいモデルです。
FinkTeam BORG Episode2:設計思想の明快さと技術的な整合性
BORG Episode2 は、高い再現性を目指しながら、「なぜこの音になるのか」という意思が明確に作られたモデルです。設計者であるカールハインツ・フィンクは、30年以上にわたり多くのブランドのスピーカー開発に関わってきました。BORG Episode2 は、その知見が自身のブランドで具体化された存在といえます。
このモデルの魅力は、単なるブランドイメージよりも、構造、ユニット、制振、ドライブ条件といった納得できる技術的な背景です。音の印象だけでなく、その音を支える設計の考え方まで含めて価値を感じられる点が、BORG Episode2 の特徴です。3機の中では、設計者の思想と技術的な整合性がもっとも前面に出ているモデルです。
サウンドの違い
設計思想の違いは、そのままサウンドにつながります。3機種に共通しているのは、ハイエンドスピーカーとして情報量が多く、スケール感があり、録音の魅力を深く引き出しやすいことです。そのうえで、どこに重心を置いているかが異なります。
MARTEN Parker Quintet
音場は大きく、音楽が前に浮き上がるような感覚があります。大型スピーカーらしいスケール感もありつつ、開放感や空間の伸びも感じられます。細かな空間表現も、このモデルの特徴だと思います。
低域の量感はしっかりありますが、音像が必要以上に重たく沈まない印象です。密度感がありながらも、見通しの良い低域として楽しめます。量感だけで押し出す低音ではなく、エネルギー感とコントロール性を両立した低域に感じました。
明るさや反応のよさがあり、全体として軽やかな印象があります。聴き手の気分まで前向きにしてくれるような、抜けのよさと快活さがあります。大型のスピーカーですが、重厚さよりも軽快さが前に出る点が印象的です。
このモデルは、高能率設計をベースに、前面に4基の7.5インチ・セラミックコーン、背面に4基の9インチ・アルミニウム・パッシブラジエーターを組み合わせています。振動板に使われるセラミックメンブレンは、高いダンピング特性と高い共振周波数によって歪みを抑え、サウンドステージの正確さやダイナミクスに寄与するとされています。さらに、専用アイソレーターによって共振や歪みの低減、低域コントロールの改善も図られており、単なる大型・高密度な音ではなく、開放感や空間表現まで含めて設計されたモデルです。
オーケストラ、ライブ盤、ロック、ビッグバンドのように、大編成のダイナミクスの起伏が大きい音源では、その持ち味が特に表れます。一音一音を静かに分析するというより、作品全体の勢い、ステージ感、ダイナミクスの起伏をまとめて受け止めたい方に向いていると感じました。
B&W 801 D4
王道のフラッグシップらしく、帯域の広さやスケールの大きさを土台に、全体としての安定感と説得力を感じます。音の一部分が強く前に出るというより、楽曲全体が大きな破綻なく精緻に表現されている感じです。低域がしっかり土台を作り、中域はぶれにくく、その上に高域が自然に乗ることで、全体像を落ち着いて聴ける音につながっています。
キャビネットの共振を抑える Matrix ブレーシングや、剛性と制振性を高めた独立ミッドレンジ構造のタービンヘッド、不要な空気圧や色付けを抑えるバイオミメティック・サスペンションといった技術が搭載されています。これらは音像の安定感や中域の自然さ、低域を含めた全体の土台の強さにつながっています。
クラシックの大編成作品、映画音楽、ライブ録音のように、音の広がりや全体のまとまりが大事な音源で分かりやすく表れます。どこか一か所の強い個性を楽しむというより、録音全体の構造や完成度を落ち着いて楽しみたい方に向いています。
FinkTeam BORG Episode2
音の輪郭や見通しのよさに加えて、全体が整理された感じやまとまりの良さを感じます。音が派手に前へ出るというより、各要素が整った状態で音楽を描いてくれて、音楽を誇張感なく気持ちよく聴けます。ボーカルの位置、伴奏との距離感、残響の消え方といった情報が、無理なく整理されて耳に入ってくるため、情報量が多いのに聴き疲れしにくい感覚があります。
多層構造キャビネットとダンピング層によって色付けを減らし、ステレオイメージの焦点改善やリスナー疲労の軽減を目指しています。さらに、わずかな後傾を加えることで、ボーカルや楽器の位置がより定まりやすくなり、音場の広がりや奥行きもつかみやすくなるよう配慮されています。こうした構造的な工夫によって、必要なダイナミクスやエネルギーを確保しながらも、過剰な演出感にならない音作りがされています。
ボーカル、室内楽、小編成ジャズ、アコースティック録音のように、音色や定位、残響、演奏の細かな表情が大切な音源で、このモデルの良さは分かりやすく表れます。第一印象の派手さよりも、音色や空間表現、細かな表情を丁寧に追いながら、長く落ち着いて聴きたい方に向いていると感じました。
導入時に見ておきたい違い
3機種とも高級機ですが、導入のしやすさは同じではありません。音の好みだけでなく、部屋の広さ、設置スペース、アンプとの組み合わせまで含めて考えておきたいですね。
MARTEN Parker Quintet
高感度で反応のよさが魅力ですが、4Ωでサイズも大きいため、見た目の美しさだけでなく、設置スペースやアンプとの相性まで含めて確認しておきたいモデルです。開放感やスケール感を活かすには、置き方の影響も小さくありません。
B&W 801 D4
3機種の中でも特に重量級で、設置、搬入、駆動力の確保まで含めて考えたいモデルです。そのぶん、条件が整ったときの安定感や土台の強さは大きな魅力です。
FinkTeam BORG Episode2
重量級ではありますが、サイズや数値だけで判断するというより、設計思想やドライブ条件も理解したうえで選びたいモデルです。第一印象の派手さより、長く使うなかで納得感が深まるタイプだと思います。
優劣ではなく、音楽をどう楽しむかで選びたい
MARTEN Parker Quintet、B&W 801 D4、FinkTeam BORG Episode2 は、いずれも600万円級のハイエンドフロアスピーカーとして高い完成度を備えています。
高額なスピーカーほど、正解はひとつではありません。どれが最も優れているかを決めるより、自分がどのような音源を、どのような気分で、どのように楽しみたいのかを考えることが、選び方としては自然だと思います。
加えて、部屋やアンプ、設置条件まで含めて考えると、自分に合った一台はより見えやすくなります。
今日ご紹介した3機種はどれもOTAI AUDIOで常設展示しています。実際に聴き比べながら、それぞれの違いを確認していただくのが一番わかりやすいと思います。

