Vestax R-1
-第2章- R-1の語り。
R-1
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(第1章の続きから)では、ベスタックスR-1プレミアムって書いてありますけど、これはR-1プレミアムっていうのが正式な商品名ですか?
はい。”R-1プレミアム”がこの正式な名称です。
R-1 PIC1
なるほどですね。もう実際に外見からもすでにプレミアム感が漂っている気がします。
実際に会見さん、R-1の簡単な仕様だとかコンセプトみたいなところをご説明していただけますか。
はい。ベスタクスは、昔からクラブミキサーやプロ向けのサウンドデバイスを作っておりまして、代表的なミキサー製品だとPMC-30とかPMC-50あたりで、 世界中のクラブ現場で実績のあるプロフェッショナルミキサーです。その中でもPMC46(mk2)というロータリーボリューム型のミキサーも製造おり、
これらのモデルをベースに作ったのが、このR-1プレミアムです。当時ハウスクラブシーンでは主にロータリー型ミキサーが現場で使われていました。
特にロータリーミキサーではUrei1620というモデルが現場で多く使われていましたが、当時ureiはそのモデルは生産をしておらず、市場には中古品しかないという状態でした。
そこでDJミキサーの老舗の立場として・・・・
老舗ですよ。老舗老舗!
(笑) 老舗としての立場からベスタクスが作る最高のロータリーミキサーをこの時代に作ろう!と会社スタッフ全体で取り組んだモデルです。
パーツや設計に関してもかなりこだわっておりまして、、説明すると長くなってしまうんですが・・・。
いいですよ!じゃあ朝までいきましょう。(笑)
朝まで聞いてくれますか(笑) このモデルに限らず、いつも重点を置いているのは、設計からのアプローチだけではなく、
実際にこの機械を現場で使って「お客さんがどう感じるか」、「音をどう体感してもらえるか」、「DJの方に気持ちよく使ってもらえるか」、という部分です。
設計面ではベスタクスのアナログ技術のノウハウを出しきって、高音質・高性能・高品質を目指し、同時にそれを現場で使ったときに実際にどう感じるかという2つの面を擦り合わせすることに焦点を当てて物作りをしています。
例えば、一次試作品(最初に製作したサンプル)が出来るとすぐにクラブに持っていきまして、当時では、クラブYELLOWさん、Airさん、ageHaさん、ハーレムさん等の方々やDJの方の協力を得て、クラブで音を鳴らさせて頂き、
そこで厳しいご意見をもらいまして、そのフィードバックをもとに設計改良を行い、という工程を何度となく繰り返し、徐々に完成まで近づけて行きました。
なるほど。1つ質問があるんですけど、例えば試作品を作ってクラブに持って行きますよね。
その時に音に対する意見があって、それで改善したりという部分は、「こういう音にしたい」というのを現場で実際に受け取って、それを設計の人にどう伝えるのですか?
そうですね。例えば、低音の輪郭がもうちょっと欲しい、高域がもう少し伸びてほしい、ここの音声帯域の音はクラブで長時間聞いていると疲れるとか、
現場で音を聞いて感じたご意見を頂き、設計側で最終設計調整する。ここが技術陣の設計ノウハウの見せ所なのです。
なるほどですね。そこら辺の細かいリクエストがあって、またそれを受けて開発の方が直して。また持って来て。
そういう細かいやりとりっていうのがやはり会社の中で技術の方とかを抱えてないとやっぱり難しい部分もあると思うんですけど、
そこができる、やられて来たっていうのがベスタクスの凄いところだなっていう風に思います。
ありがとうございます。もともとベスタクスはギターの設計製造が原点でして、実際に使ってもらう環境に楽器を合わせ込むことを長くやっていました。
ほー!!!
そうなんです。もともとジャズギターとかフュージョン・ロックのエレキギター等のプロ向けの楽器を作っていました。 ギター、楽器のプレイヤーの方達は、それぞれ手の大きさも違えば、弾き方も違い、音や演奏感も違います。
それぞれのお客様の感覚的な要望を製品に再現する、ということがベスタクスの物作りの基本になっています。 この姿勢を音響機器やクラブ現場のミキサー製品でも生かせる様につとめています。
なるほど。だからベスタクスさんはプレーヤーを大事にするっていう社風はそのギター作りのところからきているんですね。
結構今の最近DJを始めた若い人なんかはギターを作っていた、というのは軽く衝撃だと思います。
ミキサーの話に戻りますが、実際のところ、やっぱり音がいい分、手間もかけている分、お値段のほうも・・・それなりにするんですけど、「なんで値段が高いの?」を、やっぱり知りたいなって。
そうですね。実際にかかるパーツの費用はそれなりになってしまいます。
そこで、そのパーツや設計面でいくつか説明させていただきたいのですが。まず音の一番の要となる電源の設計に関しては、 現場機器で使える最大限の電圧容量が取れる設計にしています。
根本的に電源とか電気っていうのがミキサーにとっては重要なんですか?
はい。もともとのソースですね。このミキサーから出てくる音はすべてそこのおおもとの電源から作られるものなので、温泉の源泉みたいです。
例えばそれは人間で言うと血液みたいな・・・もうほんとに根っこ、っていうことですね。
はい。まずこの電源が第一の音の設計要素と考えています。この本体が重たい理由は搭載している大型のトランスの重さなんです。 トランスはコンセントの電源から本体電源を生成する部分です。この大型電源を元に、周囲の回路設計やパーツの種類などを選定して設計していきます。
これらの設計は、ダイナミックな音を歪みなく出力するためのヘッドルームだったり、音の立ち上がりの速さを決めるスルーレート、全体の音質バランスに影響します。 その電源環境下で貴重なアナログ音声信号がきれいに流れる様に設計していきます。それを実現するためにパーツを厳選していったり、パーツを組み合わせたりしていきます。 なので、先ほどのお値段の話もそれなりになってしまうことがあり。。
もう開発費用が半端なくかかってるっていうことですよね。パーツを集めて、はい、音が出た!って言っていうことではないんですね。(笑)
作っては、クラブに持って行って。
持って行ってはチェックして(笑)
で、また再提出。
(笑)ですね。その繰り返しで1つずつ、使うパーツや設計を固めていくんです。
なるほど!なるほど!その電源トランスだったりだとか、他の操作部やパーツに関してもこだわって作ってると。
はい。特にこのロータリーミキサーの場合は、ボリュームを回した時の操作感やそのボリュームを回した時に上がっていく音量の上がり方、 カーブ部分に関しては細心の注意をはらって設計をしました。
現場でプロのDJの方がミキサーを使われる時に、例えばトルク感が無いロータリーボリュームだったりすると演奏している時の気分も高揚しないですし、 クラブのあの大音量を一つのミキサーでコントロールので、しっかりしたボリュームで音量の微調整をしなければならなかったり。
しかも現場機なので簡単には壊れません!という条件を満たしたボリュームを選定していまして、 当時その代表格だったボリュームは日本製ALPSの”40型ボリューム”という大型の抵抗器を使っていました。
もう今は生産中止になってしまったのですが。
R-1 PIC2
そういうボリュームが搭載されているんですね。じゃあもうこのミキサーは二度と作れない?
このボリュームはもうないのですが、同様のALPS製ボリュームを使って設計できます。
なるほど。あとちょっと私、このインタビューの前に見せてもらって衝撃を受けたんですけど、 「パネルが木製」だっていうことが・・・びっくりしました。実際に木の部分とかもちょっと見えてたりして、ホントに木なんだ!っていうところが・・・。
そうですね(笑) こういう電気機器で、”木のパネル”を使う機会は少ないのですが。デザイン的な試みと、 コントロール面が凹んでいて操作する時に手が入りやすかったり。
こういう機械に木を使うというのは難しいんです。普通、乾燥すると木は割れてしまうのですが、 良質な加工を施された材で作ると乾燥しても割れにくいんです。
R-1 PIC3
初めて聞いた!衝撃です。なるほど。道理でデザインに温かみがあるわけだ。流麗なフォルムで、本当にセンスのいいデザイン。木製だったんですね。
(笑) 木だったんです。
なんならパネルだけ燃やしてみるみたいな。ベスタファイヤー。わかる人だけ笑ってくださいね。
(笑) 名機ですね。でも簡単には燃えません。
この事は本当に衝撃を受けました。なるほどですね。 R-1がリリースをされて、そこから次に・・・R-2というのはどういう経緯で開発に至ったんでしょうか?...
-第3章- R-2の語り。に続く...
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